梅芸で公演中の「ポーの一族」をライブ配信で観劇しました(2021年1月16日17:00~)
すご~く良かった!
DVD欲しい!
(終演後の明日海りおさんの話によると、この日の収録がDVDになるっぽい)
以前、宝塚の「ポーの一族」を確かWOWOWで観て、ビジュアルの完璧さから「これは宝塚以外無理なんじゃ?」
と思ったのですが、いやいや男性キャストの入った梅芸版も素敵。とても。
個人的に男性コーラスの厚みも入っている方が好みなので、非常に満足度の高い公演でした。
明日海りおさんエドガーの哀しい目、千葉雄大さんアランの虚ろな目。配信ならでは表情のアップを楽しめました。
ふと日本には、劇団四季が存在してくれ、宝塚が存在してくれ(今回のは梅芸だけど)、ミュージカルといえども、色々なタイプがあって幸運だと思いました。
配信前日、劇団四季の「 The Bridge ~歌の架け橋~」を新しい春劇場で観劇したのですが、今の不安の多い時代の中、真っ直ぐに「人生って生きるに値するものだよ」と訴えてくれる公演で、冒頭から最後まで涙びしょびしょで泣けてしまい、
一方、この日のポーの一族のように、「存在してはいけないものとして永遠の時を過ごさねばならない」虚無感や哀しみを表現する宝塚、梅芸の公演も心を打つ。
は~素敵。
ミュージカル「ポーの一族」のあらすじ
ポーの一族 文庫版 コミック 全3巻完結セット (小学館文庫)
幼い兄妹エドガーとメリーベルは、森に捨てられる。
エドガーはメリーベルをとても大切にしている。エドガーにとってメリーベルは守るべき宝。
2人は館に住む老ハンナに拾われる。老ハンナは、永遠の時を生きるバンパネラの「ポー」の一族の一人であった。
村では、血を吸う「バンパネラ」の噂があったが、エドガーは自分がバンパネラの一族に拾われたとは気づいていない。
ある日館で、ポーの一族の一員、ポーツネル男爵の婚約式が行われる。婚約式では彼の妻となるシーラを、ポーの一族に迎えようとしていた。
森でエドガーは偶然、館へ向かうシーラに出会う。
美しく優しい女性。エドガーはシーラに憧れる。
子供のエドガーとメリーベルは婚約式への出席が出来なかったが、エドガーはこっそり様子を伺う。
婚約式には一族の大老ポーも登場。
一族が見守る中、シーラは血を吸われバンパネラになる儀式を行う。
驚いたエドガーは他のポーの一族に見つかってしまい、メリーベルの安全を保障する代わり、成人したらバンパネラになると誓わされる。
しかし、ポーの一族がバンパネラであると気付いた村人たちが一族を襲い、老ハンナが消滅。一族滅亡の危機を感じた大老ポーは、無理やりエドガーを仲間に加えてしまう。大老ポーも消滅。
14歳でバンパネラになってしまったエドガー。
望まずに人ではないものになってしまった絶望と哀しみを背負って生きていく。
一度、養子に出されたメリーベルも一族に加え、ポーツネル男爵とその妻シーラを養父母として長い時を生きることとなる。
少年少女のままバンパネラになってしまった、エドガーとメリーベル。
2人は成長しないため、同じ街にいられるのはせいぜい2年。
場所を変え、時を旅するバンパネラたち。
ある時、4人は新興の港町ブラックプールに姿を現す。
そこには、商業的に成功した町一番の名家、トワイライト家の跡取りアランがいた。
みんなにちやほやされていたアランは、自分の機嫌取りをしないエドガーに新鮮な気持ちを抱く。
父親を亡くしたアランは母親のレイチェルを大切に思っているが、母の主治医ジャン・クリフォードが、どうも母親を誘惑しているように見え苛立つ。
また叔父夫婦は、彼らの娘でアランの従姉マーゴットとの結婚をすすめてくる。会社を自分たちのものにしたいためだ。
ポーの一族、ポーツネル男爵とシーラは、新しい血を求め、ジャン・クリフォードとその婚約者ジェインに近づく。
エドガーはメリーベルのために、アランの血を求める。
キャスト感想
エドガー・ポーツネル:明日海りお
宝塚の明日海さんエドガーも素晴らしいけど、梅芸は男性キャストが加わったことで、明日海りおさんの少年ぽさと人外感が増したかも。
人間の中にふわっと紛れ込んだ、人ならぬ者の空気感をまとっていました。
エドガーは本当に孤独で、人ではないバンパネラになってしまっただけでなく、成人前の14歳の若さで、しかも本人が望まずにバンパネラになってしまい、苦しみを抱えながらいくつもの時代を過ごしていかなければいけない。
時折ポーツネル男爵やシーラとぶつかるシーンがあるけど、シーラと違って望んでポーの一族になったわけではないから、当然反抗心はある。
エドガーの多面性・・・少年らしい反抗心、メリーベルに見せる心根の優しさ、諦めからくる老成した雰囲気、血を感じさせない、はかなげな佇まい、全てが明日海りおさん通して表現され、終始引き込まれました。
抑えた演技なのに、心に流れる血を感じるというか。
一番印象的だったのは、アランを迎える時、漫画でも有名な「おいでよ。ひとりじゃさみしすぎるから」というラストに近い場面の目。
切なげで、胸がギュッと痛くなりました。
この日の舞台がDVDになるらしいので、このエドガーの目が残るの嬉しい。
アラン・トワイライト:千葉雄大
大人の汚い欲望に振り回され、うつろな目をする千葉アラン...とても良かったです。
宝塚のアラン柚香 光さんは、自分の不安を怒りでしか表現できないアランだった気がするのですが、千葉アランは汚い大人のドロドロした欲望に膿んでいて、でも完全に膿んでしまうほどには大人じゃなくて。
生意気で不安定。でもエドガーに興味をもってからは子犬のようになついて...寂しかったんだなぁ。アラン。
エドガーもアランも、大人の欲望の餌食になって、その年に不釣り合いなものを背負わされて、最後は2人の魂が共鳴したのかな...そんな気がしました。
シーラ:夢咲ねね
実は梅芸のキャスト発表があった時、すごく心配してしまったw
夢咲ねねさん、私はとても好きなのですが、娘役出身らしい美しい所作やコミカルな演技、可愛らしさが好きで、大人の女性のシーラは大丈夫なのかなぁと。
宝塚版のポーの一族では、娘役トップの仙名 彩世さんが演じられていて、歌もダンスも素晴らしい仙名さんなので、とても素敵なシーラだったのですが、ねねちゃんは正直、歌はそこまで強くないと思う。
でも、想像以上にとても素敵なシーラでした。(お歌はちょっと弱いかなと思うところがあったけど)
ねねちゃんは、人とバンパネラの違いの差が一番わかりやすくて、バンパネラになった時の禍々しい美しさは鳥肌もの。
清純、艶やかさ、人ではない禍々しさ
こういう雰囲気ってどう出せるんだろう?
演技というのか、中からにじみ出てくるオーラというのか。
ポーの一族のDVD買ったら、たぶんねねちゃんのシーラを何度も巻き戻してみると思う。本当に引き込まれました。
フランク・ポーツネル男爵:小西遼生
ポーの一族はビジュアル的に宝塚じゃないと難しいと思っていたけれど、小西さんがキャスティングされたと聞いて納得。宝塚出身の方々に囲まれても違和感のない美しさ、さらにフランケンシュタイン演じただけあって、人間でないものの雰囲気もまとっている。黒マント姿がとても素敵。
エドガーとの関係は、宝塚の瀬戸かずやさんに比べると、もっと生々しく感じたかな。瀬戸さんは、一家の長としての鷹揚さがもっとあったように感じましたが、小西さんポーツネル男爵はエドガーとはバチバチしていましたね。
メリーベル:綺咲愛里
めちゃ可愛いメリーベル。可愛い役を演じるのって案外難しいのではないかと思いますが、ひたすら天使でした。
老ハンナ/ブラヴァツキー:涼風真世
圧倒的な存在感を放っていた涼風真世さんの老ハンナとブラヴァツキー。
響き渡るドスの聞いた迫力のある声、老ハンナの異次元感、ブラヴァツキーの顔芸(笑)
老ハンナの老けメイクでありながら、この世ならぬ美しさは、涼風さんじゃないと絶対に出せなかったと思う。
ポーの一族というパズルを組み合わせるために、欠かせない大きな大きなピースのお一人。
大老ポー/オルコット大佐:福井晶一
福井さんも重厚感と迫力半端なかった。
福井さんも涼風さんも2人とも本当に1000年くらい生きていそう。
大老ポーは、キャッツの長老猫オールドデュトロノミーを思い出したw
ジャン・クリフォード:中村橋之助
宝塚ファンの橋之助さん!声が柔らかくて優し気。
ジャンはもっと遊び人なイメージだったけれど、シーラに振り回される真面目な田舎医者といった印象でした。
ちょっとまだ固さがあったかな。次の配信23日だけど、公演後半、東京公演もみてみたい。
ジェイン:能條愛未
お芝居すごーく良かった!可愛い雰囲気と同時に垢ぬけなさが出ていて、シーラとの違いがわかりやすい。乃木坂46だった方と知ってびっくり。乃木坂は桜井玲香や衛藤美彩もミュージカル舞台に出ていますね。
レイチェル:純矢ちとせ
しっとりした大人の色気のある女性で、アランが自慢したくなるのがすごくわかる。優しさと弱さが同居していて、もちろん息子への愛情はあるんだけれど、男性を頼らないと生きていけない弱さがあって。出番少ないのに、アランを不幸にする原因を作っているのがよく理解できる母親像でした。
ストーリー的にエピソード詰め込み部分があるのも否めないけど(メリーベルが養子に出た後の話とか)、宝塚版同様、話の流れがわかりやすいと思いました。細かい部分では異なる場所あるけど、宝塚版とほぼ同じ。
ポーの一族、東京公演の販売スタートした時、確か一席空けで公演期間も短かったから、チケット全然買えなかったし、配信してくれて本当に良かった。
そして、公演が無事に行われて本当に良かった!
カンパニーの皆さんがこのまま中止になることなく、大千秋楽を迎えられますように!