ミス・サイゴンを最後に観たのはいつだったかよく覚えていないのですが、以前はエンジニア役、キム役のキャスト表を見ながら全員の舞台を観られるようにスケジュールを組んだものでした。
でもキム役にソニンちゃんが出ていた時、彼女の必死さがあまりに痛々しく観劇中に涙が止まらくなり、それ以降ミスサイゴンを観なくなりました。(ソニンちゃん、素晴らしすぎた)
サイゴンは美しい曲が多く話がわかりやすい、そしてヘリコプターを登場させるシーンは圧巻で大劇場ならではの楽しさもあるのですが、ストーリーに救いがなく、今こう思い返すだけで悲しくなってしまう。
レミゼも悲しく泣けるシーンが多いのですが、革命における登場人物の闘いが今の私たちの幸せにつながっているという思いがあるし、救いのある愛情に満ちた涙が多いのに対し、ミスサイゴンは登場人物誰も幸せじゃない、絶望感が最後に残りますからね...
強いて言えば引き取られたタムが恐らく幸せに暮らすだろう(そうであってほしい)という事くらい。
それでも今回ミスサイゴンを観に行ったのは、市村正親さんがエンジニア役として最後の舞台になるから。
普段、ミュージカルを観に行くときは楽しみワクワク~、嬉しい緊張感に溢れているのですが、今回は市村さん最後の寂しさやストーリーの重さにやや沈み込みながら劇場に赴きました。
2016年10月28日ソワレ
ミス・サイゴンキャスト
エンジニア 市村正親
キム キム・スハ
クリス 上野哲也
ジョン パク・ソンファン
エレン 知念里奈
トゥイ 神田恭平
ジジ 池谷裕子
タム 君塚 瑠華
舞台が狭く見える市村さんのエンジニア
そう、これが俺の、アメリカン・ドリーム?????????? pic.twitter.com/2dT7u9wuaT
— ミス・サイゴン JAPAN (@Miss_Saigon_JPN) 2016年10月22日
ぶつぶつ書きましたが、行くとやはり圧巻だったサイゴン。
市村正親さん、以前観た時も素晴らしいと思ったけれど、今回はさらに力が抜けて、余裕たっぷり。
ここ(サイゴン)を抜け出してアメリカへ行ってやる!という強い意志と、どこでも生きていけるしぶとさ、GI(アメリカ軍兵士)たちと上手くやっていく処世術。
エンジニアの曲は、メロディーにのって歌うだけでなく、アメリカンドリームのように自分のセリフをしゃべりながら歌うものが多い印象だから、演じる方もそれなりに人生経験がないと、観客を乗せられない気がします。
空気感を作る必要があるというか。
で、市村さんエンジニアはその空気を作るのが上手。
アメリカンドリームは大きな舞台に途中セットが出てくるまでエンジニアが一人で立って歌い演じるナンバーですが、帝国劇場のような大きな舞台だと役者さんによっては、舞台が大きくも小さくも見えます。
以前も思った事ですが、市村さんのエンジニアは大舞台の帝国劇場が小さくみえる。体格的には小柄な市村さんの存在、オーラがすさまじく観客みんなをエンジニアが夢見るアメリカンドリームの中に連れて行ってくれるようなパフォーマンスでした。
10/25(火)に市村さんがNHK「スタジオパークからこんにちは」に生出演?????https://t.co/kbVNZjbE9n pic.twitter.com/vM3BEOr9Bw
— ミス・サイゴン JAPAN (@Miss_Saigon_JPN) 2016年10月24日
キム・スハさん、無垢で強いキムぴったり
そしてこの日、やはり一番泣かせてくれたのがキム。
キム役は当初この日は昆夏美さんの予定でしたが、声帯結節によりサイゴンを休演される事に。
声帯結節は歌手など声を酷使する人に多いようです。昆夏美さん、早く治られて舞台に復帰できるよう願います。
さて、昆夏美さんの代わりに出演されていたキム・スハさん。私は初めてスハさんの舞台を観たのですが、いやぁ....キム役のイメージぴったり。
透明感のある歌声で無垢な表情、母になってからは親の強さも出て、スハさん登場シーンからもうずっと涙が出てしまいました(p_q)
もう自分に「キム=かわいそう」という刷り込みがあるせいで、泣くスイッチが入っちゃっているというのもありますが、キムのあどけない少女の表情を見るたびにこの後の考えて辛くて辛くて。
透き通った声が良く伸びて、サイゴンの美しい旋律が本当によく合いました。
キム・スハさん、声量も非常にあって、1幕の最後「命をあげよう」で、息子のタムを抱き寄せて歌うシーンは母としての鬼気迫るようなすごい迫力。
サイゴンをリピートしている方はこで涙腺崩壊する方も多いと思うのですが、私も決壊して洪水状態に(p_q)
この後、休憩になるので客席に明かりがついてしまい、泣き顔をごまかすのが本当に大変でしたよ....
スハさん同様、韓国出身のパク・ソンファンさんも歌声、声量とも圧巻で素晴らしかった。日本語をしゃべる所でややなまりがありましたが、そんなの気にならないくらい。
演技が堂々としていて、岡幸二郎さんのジョンを思いだしました。
そしてクリス役の上野哲也さん。戦争で厭世的になり何もやる気なく希望も何もない、という感じがよく出ていました。演技っぽくなく等身大で演じられているような印象。
だからスハさん演じるキムに出会って、汚いものだらけの時代でたったひとつ見つけた宝物のような希望な光、というものを感じたし、二人が離れてしまった時はとても悲しく(p_q)
最後に、トゥイ役の神田恭平さん。
トゥイ役は憎まれ役だけれど、キムへの想いがつまって神田さんトゥイもキム同様とても純粋で、だからとても哀れでした。
今までトゥイは亡霊役として出てくるシーンが印象的で、「怖い」という思いが大きかったけれど、今回は可哀想の方が感情が強かったです。決して悪い人じゃない。
ミス・サイゴンの最後、キムがとても哀れな結末を迎えますが、キムと一緒にアメリカンドリームを夢見ていたエンジニアも、アメリカ行きなくなっていますよね...
ほんとうになんという結末。
どうしてもキムを幸せにしたくて、サイゴン脱出の際にクリスと落ち合う事が出来たキム、というシーンを思い浮かべたりもしましたが、キムはあの当時非常にたくさんいたベトナム女性の一人で、第二、第三のキムとたくさんいるからやっぱりあの結末以外ないのだな...と。
それにしても、もう二度と見る事がないと思ったミスサイゴンなのに、舞台を観た日は結局家でCDを引っ張り出してきて聴いているし、その後も気づけば頭の中では「命をあげよう」をキムが歌っていてあやうく電車を降り損ねたりするし、サイゴン恐ろしい:;(∩´﹏`∩);:
もしかしたらまた行くことがあるのかもしれないミス・サイゴン。
今度行くとしたら泣いても問題ないようにマスクを必ず持っていくようにしよう。うぅっ
【追記】
→さんざん書いて、結局2回目行ってきました。サイゴン2回目(2016年)入ってきた
そういえば帝劇がハロウィン使用になっていました。